OBC Documentary "Demon Lord of the Round Table"

             Osean Ministry of Defence
-Details regarding Offensive Campaign No.4101-
               Top Secret Document

―――『ベルカ戦争』には、もともと謎が多い
―――終戦から10年経った現在になって、やっと一部の情報が元連合国の諸邦から開示された
―――私はその公開資料をすぐ入手し、それでは満足できず、出所不明の裏情報にも手を出した  
―――私がそこまで掻き立てられたのには理由がある

17 Dec, 1987 | The amendment of federal Belkan law.

―――この戦争は1988年のベルカ連邦法見直しに端を発する

8 Feb 1988 | The northeast declares their independence and establishes Mons as the new capitals.

―――当時、財政難に荒れたベルカは東側諸邦の独立を許した

12 May, 1988 | The northeast declares their independence and establishes Directus as the new capitals.

―――ゲベート共和国とウスティオ共和国はこの時誕生した
―――しかし、ベルカの財政難は収まる事はなかった

29 Aug, 1991 | The northern territories are sold off to independent and FATO states.

―――一方で、その流れに乗じて肥大化していった巨大国家オーシア

29 Aug, 1991 | The northern islands of the five great lakes are ceded to Osea.

18 Dec, 1991 | Territory reformations are made.

―――その経済恐慌の中、極右政党が政権を獲得する
―――「強く正当な国家の再生」をスローガンとして

―――1995年3月25日

25 Mar, 1995 | The Belkan invasion of neighboring countries begins.

―――ウスティオでの天然資源発見をきっかけに
―――ついにベルカは隣国への侵攻を開始した

―――『ベルカ戦争』の開戦である   It was begining of The Belkan War

The Belkan Assault Intenesifies---Neighboring Cuntries Too Slow to Act

―――準備不足の各国は伝統のベルカ空軍の前に敗走

30 Mar, 1995 | Nearly the entire Republic of Ustio falls under Belkan rule.

―――数日の内に山岳地を除く全域を占領下に置かれたウスティオ政府軍は、外国人傭兵部隊を組織し、

1 Apr, 1995 | The Osean and Allied Force counterstrike begins.

―――オーシア連邦、サピン王国などの国々との連合作戦に望みをかける
―――ここまでは、十年前から知られたことで、教科書にも載っている
―――だが資料にある奇妙な類似点を見つけた

 

......66th Tactical.................
..nesnelry toward Ustio's ware......
....the foreign mercenary suquadron.


―――ウスティオ空軍に参加した一人の傭兵に関する記述

..pher  pliots  within  their rank....
..alled Deamon Lord by his .......
........Fighter,2 TAC Name......

―――そしてそこに残された『鬼』という暗号
―――情報としてはほとんどが不十分で、まとまりがない
―――だが私はそこに惹かれた

―――私はこの傭兵を通じてベルカ戦争を追いかけることにした
―――その先に何かがある
―――この戦争の隠された姿か、ただのおとぎ話か
―――その傭兵本人には会うことは出来なかった
―――存在自体があやふやだ
―――ただ『彼』と関わりのあった人物数人を突き止めることは出来た
―――『片羽』はその中の一人だ


[ヴァレー空軍基地  4月15日 9時30分]
"Valais Air Base" 019°16'55"N 239°31'24"E 0930hrs. 15 April 1995


「傭兵諸君。今回の任務について説明する。」
いつかのように、傭兵連中がブリーフィングルームに揃えられた。今回の任務は、ウスティオ内部の部隊ならどこでも直面しているだろう、兵站ルートの確保。場所は、アルロン地方のルート171。このヴァレー空軍基地は、レクタの国境を越えた輸送ルートがあるが、他の奴らはそうではない。各地で孤立した部隊の再編成を行いたくても、物資がなければ話しにならない。そこで、多少なりともまともな体勢を整えている俺たち傭兵の出番と言うわけだ。
「このルート171には、アーレ川、エムズ川に架かる3つの橋があるが、このいずれもがベルカの機甲部隊によって封鎖されている。諸君らの目標はこの機甲部隊だ。陸路での輸送路確保が出来れば、ウスティオ内部に侵攻したベルカ軍を追い出す足がかりとなる。幹線道路沿いのベルカ地上部隊をたたき、我が軍と、オーシア軍とを結ぶ輸送路を確保せよ」
と言うわけで、出撃。雄たけびをあげながら飛び出していったやつ、ゆっくりといすから立ち上がり、やはりゆっくりと出口に向かう奴、司令官殿にばっちりと敬礼してから出て行く奴……、
「おい、何でサイファーがいなんいんだ?俺様の愛の言葉が無駄になっちまったぞ!」
…俺に絡んでくる奴……。
まぁ、千差万別。いろんな奴がこの基地にいる。俺の相棒なんかもその一人だな。適当にジョンの絡みをかわしながら、俺もハンガーに行く。…結局、ハンガーまでついてきたが。
相棒はどこにいたんだ?前のときも姿が見えなかったが…。

ハンガーに着くと、既に相棒はタラップを上がるところだった。ジョンの奴が悔しそうにしている。いい加減ほっといて、俺も自分の機体に乗り込む。俺が乗り込むと、アル(本人がそう言ってきた)がハーネスを締める手伝いをする。
「お嬢さんのこと、しっかり見ててくださいよ。あれで結構繊細なんですから」
俺がシートに完全に固定された後、去り際にそんな事を言っていく。
そりゃ見ていくさ。仕事だからな。だが、お嬢さん?
まるで、舞踏会に出かける令嬢を見送る執事だな。考え事をしているうちに、相棒のF/A−18Cが先に動き出してしまって、俺はその考えを中断することになった。2機でそろってタキシング、滑走路に入る。
<<ガルム隊、離陸を許可する。フェンリア隊は、そのまま進め。メナス隊はどうした?>>
A/Bオン。機体は一気に離陸速度へ。150で操縦桿を引く。相棒の後ろについて、南へと進路をとる。
<<ジョンの奴がいない?何をやってるんだ…>>
…本当に、何やってんだ、あいつは…。
ジョンは相棒の飛び立つのを見ていて遅れてしまい、メナス隊の部隊員からひんしゅくを買っていた。

[アルロン地方 4月15日 10時20分]
"Arlon" 014°47'46"N 234°27'58"E  1020hrs. 15 April 1995


<<こちら空中管制機イーグルアイ、全隊へ>>
オーシアからの贈り物のAWACSが今回から参加できた。前回のときは、エンジントラブルの所為で動かすことも出来なかったそうだ。相当な不良品をつかまされたらしい。整備班がエンジンから何まで総点検してやっと動き出したと言うことだ。
<<攻撃目標は幹線道路沿いに布陣している。作戦を開始せよ>>
「AWACS、エンジン不調とかはなしだぜ。しっかり見ていてくれよ」
<<それはお互い様だ>>
とはいえ、上から戦場を見渡せる存在がいるのといないのでは、大きく違ってくる。こちらのレーダーや目だけではどうにもならない物もあるのだ。半世紀前まではレーダーの技術もそれほどではなかったが、近年の技術発達は末恐ろしいものもある。いずれ、俺たちみたいな傭兵が不要になる時代が来るのだろうか。レーダーに敵の反応。
まあ、しばらくは稼がせてもらうとしよう。機体を敵の方向に向ける。他の傭兵たちも、それぞれの目標に向かっていく。俺たちは、アーレ川南側の防御陣地へと向かう。しばらく飛ぶと橋の袂に対空車両が見えてきた。サイファーの機体が一気に低空まで降下。俺もバレルロールでその後ろにつく。高度を落とし、速度を上げたため、敵に一気に近づく。機銃選択、ガンアタックを行う。サイファーの機体が右に少しだけ捻る。やはりこの撃ち方は癖なのか?俺は、そのまま機体を水平に保って目標の戦闘車両に向かう。ガンレティクルが現れる前に相棒は発射、俺はしばらく待って、その後から叩く。直撃を被った戦車から炎があふれ出し、周りにいた敵兵がその炎に包まれ、その後の爆発で見えなくなった。
(嫌なもの見てしまったな)
だが、これが戦争だ。そうやって自分を納得させる。他の傭兵隊も到着し、南側の防御陣地は次第に抵抗力を失っていった。ふと気がついたが、民家が攻撃目標指示されている。気になった俺はAWACSに確認を求めた。
(サイファーは…あれをやる気はなさそうだな)
しばらくして、回答が帰ってきた。あの建物はベルカの備蓄が保存されているとの事。攻撃は避けるように。だったら最初からそう言え。心の中だけで毒づきながら、俺は次に目標に向かう。
《第一守備隊が撃破されたぞ!くそ、全軍!連中を叩き落せ!》
《本部からの指示はどうした!?くそ、役に立たない無線機め!》
《通信網が遮断されている!?》
《本部に連絡しろ!増援を寄こすように言え!》
「増援が来るようでは、厄介だぜ。早めに仕事を終わらせよう」
次の目標に向かいながら、相棒の無口に付き合う。
中央部の陣地は、移動式の車両を使い流動的な対空網を使った強固な陣地だったため、傭兵連中も一気に畳み掛けることができずにいた。更に、上空にはわずかばかりの敵機がいる。この敵機と、対空網の連携で、敵はこちらを迎え撃ってきた。サイファーは、敵機のほうに向かう。俺もその後を追い、上空の敵機に襲い掛かる。敵機は、こちらの接近に気がつくと、しばらくこちらの動きを見てからパワーダイブ。敵の対空網の只中に飛び込んでいく。こちらはその後ろを追う愚を犯さず、しばらく上空で待機。他の傭兵たちも一時様子見に移ったようだ。対空砲の煙が一時的に収まる。敵機、一気にスナップアップし、こちらにヘッドオン。真下から狙う形に。サイファーも真正面から敵機にヘッドオン。だが、相棒の機銃の腕、上と下の上下関係を考えていなかった敵機は、一手早い機銃攻撃に火を噴く。サイファーはそのまま降下し、敵陣地を機銃掃射。何箇所かで爆発が起きる。俺はその後ろから降下、敵の対空砲がこちらを狙ってくるが気にせずに爆弾投下、続いて機銃掃射。操縦桿を引き、上空へ昇ったところで爆弾が炸裂。その一瞬、敵の対空網が緩んだ隙に一気に傭兵たちが殺到し、爆弾を投下していく。哀れ、敵防御陣地はその攻撃に耐えきれず一気に崩壊し、生き残った敵兵が北側の敵陣地へと逃げ出す。だが、北側にかかる橋は既にこちらの別働隊が攻略していた。
<<アーレ川の目標は完全に制圧したぜ>>
<<だったらこっちに来い!こっちはまだ敵がっ…>>
<<ミサイルアラート!フレア!フレア!>>
更に北側の空に炎球が出現する。どうやら、北側のエムズ川方面の敵は一味違うようだ。
「援護に行くか?判断は一番機に任せる」
サイファーは、やはり何も言わずに北へと向かう。着いていくだけでひと苦労だな。ため息をつきつつも後ろを追う。だが、こいつが喋りまくるのも、なんだか変な感じがする。
<<ベルカの変態たちめ!俺様の機体に掠めてすらいないぞ!!>>
こいつは極端すぎる…。別な意味でため息を吐いていると北側の敵陣が近づいてくる。今度の敵はSAMを使った対空陣地を構成している。上空にはさっきよりも多い敵機が旋回している。
これは、手こずりそうだな。サイファー、まず初めに敵機に向かっていく。敵機もこちらを視認したのか、正面を向き、ヘッドオン。だが、こちらを向いた敵のうち、一機は少し遅れて向かってくる。相棒が敵機の真正面から飛び込むのを見ながら、俺は最初の敵機に照準を合わせる。敵機、機銃発射。サイファーはロールで回避し、その後ろの敵機に向かってガンアタック。最初の敵機を狙っていたら、後ろの奴にしとめられていただろう。先頭の敵機を撃墜しながら、やはり相棒の戦闘の仕方の巧みさに感心する。敵機を撃墜した相棒が、さらにもう1機に向かってミサイル発射。しばらく飛んだミサイルが空中に火球を出現させる。その直後に、ミサイルアラートが鳴り響く。下か!
真下にいたSAM車両から死の槍がこちらに飛んでくる。旋回や、上昇で回避せず、ミサイルの旋回半径の内側に降下。追いきれなくなったミサイルが空に向かって飛んでいく。
綺麗だな。
青空に飛び去っていくミサイルの姿は、そう思わせるところがある。それが人の命を一瞬で奪う兵器であってもだ。敵車両に機銃攻撃を仕掛けながら、そんな事を考える。燃え上がった敵車両の黒煙が穀倉地帯の空を昇っていく。サイファーも地上の敵に攻撃を仕掛けて、そのまま反復攻撃には移らずに、こちらに向かってくる。
<<地上攻撃は苦手、あまり良い気持ちがしない。空の敵を倒したい>>
まあ、判らないでもないが。だから、今回の任務には敵機はほとんどいないってのに、対空ミサイルをフル装備して来たのか……。相当嫌いなのか?対地攻撃。
「そうは言っても、これも仕ご…」
<<警告!エリア北方より飛来する機影、新たに捕捉!>>
くそっ!タイミングが悪すぎる。こっちは戦闘で弾が減り始めた頃だ。
「ガルム2から1へ。敵の増援、こいつらが本隊だ」
やはり、増援が来たか。幸い、気まぐれのおかげで、相棒は対空装備は万全みたいだ。
敵機は、北から一気にこちらへと襲い掛かってきた。中距離ミサイルでこちらを狙ってきたのか、ミサイルアラートがコックピットに鳴り響く。ここはあえて横に回避せず、そのまま真正面から突っ込んでいく。サイファーも同じ。タイミングを見計らってスティックを力の限り引く。すぐそばを敵ミサイルが通過、すぐさま姿勢を取り直し、敵機にガンアタック。通り過ぎた敵機のうち2機が火を噴き、空にパラシュートの白い花が咲く。
「残っている敵機は、あとわずか。相棒、俺がもらうぜ」
と、サイファーも加速でこちらの前に出ようとする。意外と意地張るんだな。生き残りの敵機に中距離ミサイルで攻撃を仕掛ける相棒の姿を見ながら、そういう事を考える。残弾数を確認する。機銃は残り300と言うところ。ミサイルはまだ使ってないので、2発。爆弾は残りが1。
「くそっ、弾が残り少ない」
<<ピクシー、悪いがこっちは敵の地上部隊で手一杯だ、援護してくれるか?>>
そうは言ったってこっちは弾が…。その時に無線から声が流れた。
<<こちらサックス。前方の友軍機へ、状況を教えてくれ>>
…無い…。サックス?ちょっと待てよ、どこかで聞いた名だ。
<<おい、ひょっとしてシンキチか?>>
傭兵の一人が尋ねる。そうかシンキチか!いいときにいい奴が来てくれたぜ。
<<おう、久しぶりだな。なんだか大変そうな事になってるらしいって言われたんで、ヴァレーに行く途中でこっちに廻されたんだ>>
これは、なおのこと良い。このまま援護に来てくれれば俺たちも楽に敵を撃退できる。
<<こちら空中管制機、イーグルアイ。サックスへ、敵陣地の攻略に手間取ってる。援護に回ってくれ。『片羽』そちらはどうだ?>>
<<なんだ、ラリーも参加してたのか?>>
「まだ傭兵辞められないのか?シンキチ」
シンキチ。本名はシン・キチなのだが、いつもシンキチで呼ばれているので、俺もそう呼んでいる。
<<金がないのに、暇だけはあるからな。戦場にとんぼ返り、さ>>
いつも高額の報酬を手に入れて去っていく傭兵だが、すぐに使い切って戻ってくるので、傭兵仲間では、いつあいつが傭兵を辞められるかが賭けになっていることもある。ちなみに、いまだに勝者がいない。まあ、こいつが辞めることがなければ勝ち負けもないんだが…。
「何にしても、いいときに来てくれた。こっちは弾が切れかけで、敵と交戦している。サポートを頼む」
<<了解、任せとけ。腕ならしにはちょうど良いぜ>>
腕ならし、ね…。まあ、あいつにはちょうどいいかもな。またミサイルアラート!いい加減にしろ!敵の対空車両にガンアタック。爆風で砲塔部分が舞い上がり、すぐそばのテントの上に落ちた。その後も反復攻撃を行い、敵の攻撃能力を奪う。再びロックオンアラート。今度は一番北の防御陣地からの長距離ロック。くそ、回避しづらい位置から!機体を捻った瞬間にアラートの音が変わる。発射した!ミサイルの白煙がこちらに向かってくる。4発、かわせるか!機体を一気に地面すれすれまで降下させる、上空に上ったミサイルがこちらを向く。A/Bで加速。速度計が勢いよく回る。ミサイルはまだこちらを追尾してくる。もう少し、もっと早く!速度計の表示は545Kts。急げ、急げ!ミサイルが更に頭上に近づいてきてる。ここだ!機体を90ロール、急旋回。キャノピーの横を地面が高速で動く。
一瞬、
ミサイルはこちらの動きに対応できず、数十メートル上を通り過ぎ、地上で炸裂した。安堵のため息を出しつつ、次の攻撃に備える。だが、そうそう回避できるものじゃない。俺だってぎりぎりだったんだ。他の奴らに出来るかどうか…。その直後に北側の敵部隊に爆炎が走る。誰だ?
<<イヤッホー!正直、使う気で持ってきたわけじゃないが、仲間の危機なら話は別だ!>>
シンキチのF−14Dが投下した爆弾が炸裂したらしい。おかげでこちらは助かったが……
(あのやろう……ナパーム使いやがったな…)
あんまりいい気のしない兵器の一つだが、今回だけ、感謝することにしよう。
<<シンキチ、ずいぶんと派手な兵器使うじゃねーか。後で抗議しちゃうぞ>>
<<助けられといて文句言ってんじゃねぇよ>>
その代わりに畑が焼き払われてしまっているが。まあ、焼き畑農業で埋め合わせしてくれ。サイファーの奴は地上部隊の攻撃に積極的に参加せず、上空の航空機だけを追っていた。
頭上で飛行機雲が複雑なループを描く。青空にミサイルの白煙が駆け抜け、敵機が炎と共に落ちていく。炎に包まれたF−15Eは落ちる前に方向を変え、川に向けた後にベイルアウト。持ち主を失った機体は最後の意志に従うかのように川の真中に落ちていった。
「ベルカにも、出来る奴ってのはいるんだな」
<<そうね>>
珍しい相棒の返事。上空に上がった俺の機体に近づく相棒のF/A−18Cと、シンキチのF−14D。どこにでもある標準塗装の機体だが、シンキチが乗っていると雰囲気が変わる。歴戦の戦士の身に付ける鎧は持ち主に合わせる、という事を誰かが言っていたな。シンキチの機体を見ながらそんな事を思い出す。
<<今日も『片羽』の調子はいいみたいだな>>
「また”翼なし”での帰還はしたくないしな」
そう、俺のあだ名を決めた事件でも同じ基地で飛んでいたシンキチは、頼りになる男だ。ウスティオのスカウトもいい奴を雇ってくれたな。多くの戦争に参加しているシンキチは、どこか冷めたところもある男だが、時々熱くなってしまう時がある。そんなところもあるが、対空対地両方をそつなくこなす腕前は一流だ。
<<ところで、サイ…>>
《第2守備隊が撃破されたぞ!たったあれだけの戦闘機に、なに手こずってんだ!》
《このルートは奴らにとって生命線だ!渡すわけにはいかん!》
<<ベルカ軍の地上部隊は残り僅かだ。作戦を継続>>
シンキチが何かを言おうとしたが、ベルカの無線が混線してよく聞き取れなかった。しかし、いい加減敵も撤退してもおかしくないな。もともとこの辺りの戦力は占領地域に対して少ないほうだったんだ。そろそろ綻びが出始めてもおかしくない。それは確実に現れることになった。俺たちの目の前に。
《隊長!橋の部分に煙が!このままでは戦闘区域に突入してしまいます!》
《こんなところで足止めをくう訳にはいかんだろう、ルクス輸送隊、ついてこい!》
《各員、荷物をしっかり見てやれ。必ず戦闘区域を脱出させてやるぞ!》
北側の端に向かうトラックの列が、南側陣地の跡から走っていく。敵の残存部隊だろうか?ここで合流されると厄介だ。無線が混線していたおかげで、敵の動きがわかったわけだが、あまり攻撃したくない相手だ。恐らくトラックの荷台には兵士たちが数多く乗っている。そんなところに攻撃を加えた痕がどうなるか…。そう思っていたうちに、相棒が降下していく。向かう先は、さっきの輸送部隊!
おい、地上攻撃は嫌いじゃなかったのか?
叫びたくなるが、人の生き死にで報酬を稼ぐ傭兵の間でそれはルール違反というものだ。どの道、どんな言い訳をしようと俺たちの手は血に汚れている。そんな人間が相手が戦闘を行うのを止める。傍から見れば筋違いもいいところだ。
だが、俺は……。
戦争の汚い面、誰がやったってこうなる。そんな言い訳で済ましていい感情ではない。傭兵として生きてきながら、俺はそういった場面を何度も目にした。その度に、心の奥底で暗い考えが浮かぶ。もし、俺が……
《隊長!敵機が後ろに!》
《見つかったか、負傷者の状態は!?》
《今から下ろすぐらいなら、連れてこなかったほうが良いぐらいです!》
《隊長、降伏しましょう!負傷者を戦闘に巻き込むわけにはいきません!》
《仕方ない、白旗だ!白旗を揚げろ!》
トラックの荷台から兵士が顔を出し、白旗代わりに所々汚れたシャツを振る。あの輸送部隊は、負傷者を運ぶ為だったなのか。相棒の機体は、攻撃態勢から上昇へと転じた。これでここでの戦闘も終わりだな。そろそろ緊張状態を解除しても良いかと思った俺は、少しだけ力を抜く。だがここは戦闘地域だ。いつ、どこから攻撃されるかわからない。それでも、さっきの思いを少しでも和らげる為にここは力を抜く。相棒は、白旗を振っているトラックを通り過ぎた後にバンクを振っている。
(こんなこともするんだな)
相棒のあまり見せない素顔の一部を見た気がする。哨戒飛行や、ところどころやってくる偵察機の迎撃でも必要以上の事をしゃべることは無く、基地に降りたら降りたで、ジョンのアタックを見事に回避してどこかへ雲隠れしてしまう。多分、あの隠れ家を見つけたのは、雪が降っていたからだろう。それに、足跡をわざと判りづらくして歩いたから、他の奴は誰も気づいていないみたいだ。
<<敵地上部隊の撤退を確認。作戦成功だ、これで陸路での輸送路は確保できる。よくやった!>>
<<ボーナスぐらい出してくれよ、俺は金が無いんだって>>
シンキチのなんとも情けない声で今回の作戦は終わりだ。ヴァレーへの帰投の途についた傭兵たちは、やはり騒がしい。今度はシンキチが飛び入り参加してきたから、それ関連の話題が多い。時々会話に口をはさみつつ、俺は目の前の相棒の事を気にしていた。ここまでに何も語らず、何も聞かないで過ごしてきた俺の相棒。ウスティオのエース。そんな人間を、何故俺みたいな人間に監視させるのか?その答えはすぐにわかった。

[ヴァレー空軍基地  4月15日 11時00分]
"Valais Air Base" 019°16'55"N 239°31'24"E 1100hrs. 15 April 1995


「お疲れ様」
そう言ってアルがタラップをかけてくれる。ハーネスを外し、機体から降りるときに、シンキチが外にいるのが見えた。
「どうしたんだ?こんなところまで」
「何、古い馴染みに挨拶しとこうと思ってな」
ああ、サイファーか。シンキチみたいな古参の傭兵なら、確かにサイファーに会ったことがあってもおかしくない。サイファー、ウスティオ空軍に所属している元傭兵。かつて、ベルカのトップエース『銀色の犬鷲』とも戦ったことのある伝説的パロット。噂しか知らない、俺たち若い世代には、憧れにも近い存在だが、本人と会っている俺ですら、知っていることは少ない。そう思った俺は、サイファーの事を聞いてみた。
「どんなやつだったんだ?たとえば、家族についてとか?」
「なんだ、同じ部隊にいるのに、何も聞いてないのか?」
笑いたければ笑え。あの無口と無言の圧力にはジョンですら耐えられないんだぞ。ひとしきり笑った後に、ようやく話してくれた。
「娘が二人いる」
二人!?あの見た目でか!?恐ろしい奴だ…。だがその後の言葉に俺は首をかしげることになった。
「子煩悩な男だからな、あいつは。いつも娘の写真を操縦席に張っているのに、誰にも見せたがらないんだ」
「男?サイファーは、女だぞ?」
「おいおい、ラリー。お前妖精からホモに転身か?」
「違う、そうじゃない!本当に女なんだって!」
そうしているうちにサイファーがタラップを降りてくる。その傍でアルが不安そうな顔をしてこちらを見ている。シンキチの顔も、サイファーを見つけると真剣になる。サイファーは、いつもならこちらのことは見向きもせずに奥の扉へと消えていくはずなのに、今日はこちらにまっすぐ向かってきた。そして、俺たちの数歩手前で止まる。
沈黙。お互いに、見詰め合って何も喋らない。整備班の連中も、ただならぬ空気を察してか、すぐに始める機体チェックを行わない。外では、ジョンの奴が立ち止まってこちらを見ている。長い沈黙の後、最初に口を開いたのはシンキチ。
「お前がここで、サイファー、と呼ばれているのか?」
「はい」
「その意味がわかってるのか?」
「はい」
無表情に答える相棒。二人の会話は、どこか意味をつかみ損ねる部分がある。だが、俺にだって分かることもある。
「あなたが知っているサイファーは、私ではない」
相棒は、ウスティオにおいて、最高のエースと、呼ばれた人物ではない。
「それってどういう意味なんだよ!?」
傭兵の一人が、声を荒げる。あいつは確か、サイファーに会えて光栄だっていってた奴だ。シンキチが、落ち着いた声で、そいつに向かって断言する。
「こいつはウスティオのサイファーじゃねぇ、別人だ」
「なっ、なんだよそれ!それじゃあ、俺たちを騙してたのか!?」
つかみかかるような勢いでこちらに向かってきたそいつを、アルの奴が止める。後ろから羽交い絞めにされてもなお進もうとするそいつを止めたのは、以外にも相棒の無感情な声。
「私がウスティオのサイファーだと一度も言っていません。あなたたちが勝手に勘違いしただけ」
確かに、俺たちはサイファーが本物か確かめたわけではない。言葉に詰まってしまったそいつを、同じ部隊の奴がなだめている。シンキチが、再び口を開く。
「お前がその名前を語る理由があるのか?」
今度は、相棒が沈黙する。騒然としていたハンガーが、一時の静寂に包まれる。
「私の名前は、サイファー。それ以外は、何も無い」
まるで、この基地にいる全員に宣言するかのような、重い声。しばらくシンキチを真正面に見ていた相棒は、きびすを返してハンガーの奥の扉に消えていった。傭兵たちや整備の人間が再び話し始め、ハンガーが喧騒に包まれる。シンキチはすぐにどこかに行ってしまった。俺は喧騒に包まれたハンガーの中でただ佇むしかなかった。相棒が、ウスティオのサイファーではない。だが、俺でさえ目を見張るような空戦の腕を持っている。
相棒、お前はいったい、誰なんだ?

["UNKOWN" NO DATA ]

夕焼けに基地が染まる頃、暗闇に声が響く。
「…はい、傭兵たちに正体がばれました。この基地に緘口令を敷いても無駄です、噂が流れるのは避けられません。
……いえ、むしろ彼の死を大々的に報じるべきです。『英雄の死』。そして、なお戦う者たちの姿。兵士たちの指揮を高める為の材料はあります。
?……彼女を広告塔に?それはあまりお勧めできません。
……彼女はまだ若すぎます。彼に比べると見劣りするでしょう。むしろ、傭兵たちに注目を集めさせるべきです。
………ええ、そうです。『片羽の妖精』、『サックス』、歴戦の傭兵たちがここには多くいます。こちらに目を向けさせたほうが、戦意高揚にはいいでしょう。
……はい、ではそのように。
…ありがとうございます閣下」
ため息がこぼれる。受話器を置いたオズワルド司令は、窓際にある写真立てに目を向け、その中から一枚の写真を取り出す。
「お前は、いつも俺に迷惑をかけてばかりだな。ロバート」
写真立てには、二人のパイロットの姿が映っていた。燃えるような赤い髪の男が膝を立てて、もう一人はその後ろに立ち、戦闘機の前で取った写真。サイファーの周りの時間が、少しばかり動こうとしていた。

風が運ぶのは、命の息吹。あるいは、嵐をもたらす雲か。


Phase1へ

 

小説置き場へ

 
inserted by FC2 system