[フトゥーロ運河”ゲルニコス作戦担当区” 4月24日 11時40分]
"FUTURO CANAL-OPERATION GELNIKOS” 014°03'23"N 231°28'19"E" 1140hrs. 24 Apr 1995


フトゥーロ運河上空にヴァレー組が到着する頃には、既に作戦参加機のほとんどが集まっていた。さながら、航空ショーの展示飛行のように大量の戦闘機たちが飛び交っている。だが、彼らが運んでいるのは実弾であり、彼らが空にあるのは敵を殺す為だ。こういった光景を眺めるたびに、その皮肉さに笑ってしまう。シンキチは、自らもその皮肉の一部であることに気づいて、笑おうとしたのを止めた。別に、笑ったところで戦争が終わるわけでも、任務に出なくても良くなるわけでもない。それに、そろそろ敵のレーダーにもこちらの姿が見え始めるはずだ。
ゲルニコス作戦の目的は、運河南部の敵勢力の殲滅。そのための装備に、今回は通常爆弾を装備してきた。以前アルロン地方で使ったナパームは、地域の人間からの抗議と司令の厳重注意によって使用が禁止されてしまった。元々、あの時持ってきていたのは輸送に近い形だったし、その後の罰金も予想のうちだった。それぐらいで仲間の命が救えるなら、いくらでも払ってやる。自身は金欠であるのに、シンキチにはそういった熱い面があった。そういうところが、仲間からも慕われるところでもあるが。無線機から、声が聞こえてくる。
<<こちらオーシア国防空軍ナイトアロー隊だ。噂のウスティオの傭兵ってのは、あなたたちかな?>>
<<こちらウスティオ空軍第6航空師団第8飛行隊、だったっけ?の、フェンリル隊っす>>
<<しっかりしてくれよ、フェンリル!初めがしゃんとしてなきゃ格好悪いだろうが!>>
<<いいじゃないっすか。楽しくやりましょ、楽しく>>
相変わらずトールの奴が無線機の上で漫談みたいな事をしている。それを聞きながらも、周囲への警戒は怠らない。
<<まあ、気にしないで下さいよ。うちの部隊は、開戦以来所属基地が決まらない宿無しなんですから>>
<<リオン!それを言っちゃあお終いだろ?>>
おそらく、後席の人間とじゃれているナイトアロー隊の若いパイロットの声を聞くかぎりでは、どうやらあのナイトアロー隊とは気が合いそうだな。シンキチは無線機のスウィッチを入れた。
「こちらサックス、ナイトアロー隊、今回はよろしく頼む」
<<こちらマイラ、こちらこそよろしく。ベルカの連中の歓迎は大人数で受けたほうがいいからな>>
当然だな。他の傭兵たちも張り切っている。まあ、報酬が入るのもあるだろうがな…。
<<こちらマキシ、今回が初めての大規模反抗作戦だ。締めて掛かろう>>
<<その通りだ、攻撃隊各機、そろそろ私語は慎め。まもなく運河が目視可能になるはずだ。港に駐留するベルカ軍を殲滅せよ>>
その言葉を合図にするかのように、運河の長大な姿が雲の向こう側に見え始めた。
「見えたぞ、フトゥーロ運河だ」
その直後に、ガルム隊の2機が一気に加速していく。一気に加速していく2機を眺めながら、シンキチは思った。
(あいつらは、やはり別格だな。こういったときに一番手を任せられるのは、そういるもんじゃない)
レーダーを見ると、正面に敵の反応が2つ。一気に加速して、正面からの攻撃で敵機を1機ずつ落としたガルム隊に続く形で、ゲルニコス作戦に参加した攻撃隊、その数20あまりがフトゥーロ運河南部のベルカ軍に襲い掛かった。
《レーダーに敵性反応を捕捉!各員、戦闘に備えてください》
《やはり来たな、予想よりは早いが誤差の範囲内だ。ここで連合軍を食い止めるぞ!》
《総員、戦闘配置!》
<<反撃の狼煙を上げろ!このときをずっと待ってたんだ>>
攻撃隊が近づくにつれて、ベルカ軍の動きが活発になった。シンキチが向かうのは、南部の西岸、燃料備蓄基地に展開しているベルカ地上部隊だ。レーダーでその位置を確認していると、突然レーダーが何も写さなくなった。
故障?いや、ジャミングか!ベルカめ、面倒なことしてくれるな。
ジャミングの範囲は広範囲に及ぶようで、東側に向かったフェンリル隊と交信が取れないほどだ。
<<なんだよ、またジャミングか?隊長、また有視界戦闘でもするんですか?>>
ナイトアロー隊の誰かが無線で話しているのが何とか聞こえる。舌打ちしつつ、敵のいる方向へと機体を回す。ジャミングのデメリットは、使用した側もレーダーなどの電子機器が使えなくなることだ。つまり、敵もこちらも有視界での戦闘になる。それならば、経験と勘が頼りだ。正面に見える敵車両を目標に降下する。運河の海岸線に配置されているあの車両は、どうやらSAM車両のようだ。目の前でミサイル発射の白煙が上がった。フレアを放出しつつ、機体を捻ってミサイルの進路から外れる。敵のミサイルが外れるのを確認し、SAM車両にガンアタック。一秒にも満たない攻撃で火が上がり、中から火に包まれた敵兵が飛び出してくるのが見えた。すぐに通り過ぎてしまったが、あの状態で生きているのは難しいだろう。惨いことだが、戦争が起きてしまった以上、仕方がない。そうやって、自分を納得させるしかないのが、どんなにむなしかったか。何度も戦争に参加したシンキチだからこそ、そうやった冷めた部分もあるのだ。
他の場所でも煙が上がっているが、投入された戦力に比例してその数は少ない。やはりジャミングが影響している。何とかして、ジャミングを行っている敵を突き止めなければ。シンキチは、今までの戦闘において持ち前の冷静な判断力で生き延びてきた傭兵だ。だが、今回は砂漠の天候がその判断力でも見つける事を許さなかった。ジャミング施設自体は、開戦当初から設置されていた為、その擬装、防御能力は高い水準を保っていた。更に、砂漠の砂が天然の擬装を行い、より発見しづらくしていたのだ。すぐ真上を飛んでいるシンキチにも、それは発見できなかった。

上空から見下ろしてみると、ベルカの防御体制はかなり強固なものに見える。今回も対空装備をフルに搭載しているサイファーは、上空の敵戦闘機を追尾しつつ、下の戦況も観察していた。追尾していたJ35Jが急降下、一気にこちらを引き離しにかかった。こちらも降下し、その後背に近づく。敵機が、180度ロールして上昇態勢に入ったその時を狙い、ガンアタック。真上から撃ち抜かれた敵機は高度を上げられず、運河の真ん中へと落ちていった。機体を水平に戻すと、かなり高度が下がっていて、東西のベルカ軍陣地を見ることが出来る。ジャミングの所為で、レーダーの機器が悪く、無線もノイズ交じりに近くの味方と交信できる程度まで機能が落ちている。せめて、ジャミング施設だけでも破壊しようと首をめぐらせたときに、シン・キチのF−14Dが巻き上げた砂煙が目に映った。その砂が舞った場所、2つの不思議な形の施設が並んで配置されている。その周りには、燃料基地の施設も、敵部隊も展開していない、空白の空間。明らかに怪しいその施設に向かって、機首を向ける。
<<…ザッ…こちらダルモエード3、ジャミングで敵の配置を掴みづらいです、どこにジャマーがあるのでございますですか?>>
<<こちらサックス…ザッ…さっきから探しているんだが、それらしいものが見当たらない。上空はどうだ?>>
<<こちらマキシ、現在上空の索敵中。コンタクトなし>>
上空にさっきまで一緒にいたF−22のパイロットの声が聞こえる。悪いけど、こっちが当たりみたい。目の前に見える不思議施設2つに一気にガンアタックで掃射する。二つを縦から打ち抜いた形で飛び抜けると、後ろで火花が散るのが見えた。やはり、あれが当たりだったみたい。放電のスパークから見ても、かなりの電力を使う施設だったようだ。それならば、ジャミングの施設だった可能性は高い。だが、それでもレーダーは使用不能。
<<ジャミングが弱まったぞ!クソッ、こっちははずれか!>>
<<でも、まだクリアにはなってない。どこかに似たような施設があるはずだ、そいつを探せ>>

「あの変な機械がジャミングを行っているのでございますのですね」
ヴァン・ニーダヴェリールは、自身が操る黒いA−10を下に見えるジャマーに向かって急降下させていく。敵の対空車両から火線が打ち上げられるが、気にも留めないでそのまま降下。引き起こす前に爆弾を投下し、装甲車を撃破。そのときの爆風で隣のタンクが爆発したが、爆風を掻い潜って超低空でジャマーまで飛んでいき、機首の30mmアヴェンジャーガトリング砲の火を噴く。ジャマーの周りは防御装甲で囲まれていたが、30mm機銃の前にはそれは紙切れ同然だった。一瞬で3基目のジャマーが打ち砕かれ、そのまま機銃掃射したダルモエード3によって最後のジャマーに火花が散った。
《ジャミング施設に損傷!これでは、電波妨害の実施は不可能です!》
その直後に、レーダーが回復し、無線のノイズが消える。
<<ジャミングがクリアになった!よくやった、ガルム1、ダルモエード3!>>
ウスティオの管制官の声を聞きながらさっきの攻撃を行った、ガルム1のF/A-18Cところまで上昇していく。
「これで、作戦がやり易くなったでございますです」
<<ナイスだぜ、お姉さん!基地に戻ったら一杯ご一緒したいね?>>
<<おい、シンキチ!俺様を差し置いて手を付けんじゃねーよ!>>
ウスティオの傭兵たちからのほめ言葉を聞いていたヴァンは、久しぶりの感覚に包まれていた。初戦の電撃戦以来、負け続けで僚機のダルモエード1と2を失った時から、彼女は『味方を見捨てて生き延びた』と、味方から嘲られ続けてきたのだ。実際には、ベルカ空軍との圧倒的な戦力差により撤退してきただけであるにも関わらずだ。更に、その時自分の不注意で1と2を失ってしまった。それを忘れない為に、彼女のナンバーは3なのだ。だが、そのことが周囲に通じることはなく、泥沼の撤退戦に生き延びた人間も少ない。それに、自分から訂正することもしない。だから、無線でその声が聞こえて来た時も、別に不思議に思わなかった。
<<また、プリヴィディエーニィが生き延びたのか?一体いくつの味方を犠牲にすれば気が済むんだ?>>
今日一緒に飛んできた航空隊の連中の声だ。基本的に、ああいった連中がわたくしの噂を振りまいている。自分は、開戦直後から後方にいて、大きな戦闘に出たこともないくせに味方の戦い方ばかりを批評したがる連中。本当の戦場を、知らない連中。
<<おい、どういう意味だよそれ?この姉さん、何かやったのか?>>
自分の噂が大口を叩いて説明されるのを聞いていても、わたくしは気に止めません。もはや、そんなことには慣れっこです。でも、気のよさそうな傭兵さんたちに嫌われるのは、少しだけ淋しいでございますです…。
<<だから、こいつは味方を見捨てて生きてきたゴースト、プリヴィディエーニなのさ>>
<<あなたたちは、その時何をしていたの?>>
だから、その言葉が聞こえてきたときは、驚きましたです。傭兵部隊の一人の女性パイロットが、私の噂に、待ったをかけたんです。
<<なんだって?どういう意味だ?>>
<<この人が、味方を見捨てなければならないような戦場で戦っていた時、あなたたちはどこで何をしていたの?と、聞いたのよ>>
女性パイロット―おそらく、先ほどのガルム1―の重い声で言葉に詰まったあの人たち。わたくしは、混乱していました。何故この人は、わたくしを庇うのだろうか?別に、わたくしと面識があるわけでもないのに。
<<他の戦場で、戦っていたんだ。こいつのことは……>>
<<聞いただけの事、憶測で考えた事を言いふらして、辛い戦いから生き延びた仲間の名誉を傷つける。パイロットとしても、軍人としても、失格よ>>
仲間…。あの戦いから、久しく聞いたことのない言葉。衝撃でした。報酬の為に生きる傭兵が、仲間を守る姿、そして、そのとき守られているのが、わたくしでした。
<<そうだぜ!そんな野郎は、俺様が許さねー!>>
<<気に入らないっすねー。軽蔑するっす>>
<<そうですね、この人が本当にそんな事をしたという証拠がない以上、それは言いがかりですしね>>
<<その通りだぜ、リオン!俺は、こいつら嫌いだ>>
<<こちらマキシ、どこにいるんだ?そんな不届き者は?俺が地面に落としてやる>>
次々と傭兵たちの抗議の声にさらされて、あの人たちはぐうの音も出ないほどに打ちのめされてしまいましたです。中には、オーシアやウスティオの正規兵の声まで混じっている。わたくしは、目の前がぼやけてよく見えませんです。目から、心の汗が出てしまって。
<<こちら空中管制機イーグルアイ。サピン軍機に告ぐ、作戦中に連携を乱すような発言は控えるように>>
<<なんだと!?黙って聞いていれば、好き放題言いやがって!貴様ら、ただで済むと思うなよ!>>
とうとう切れてしまった連中が、無線で叫んでいるのを聞いても、傭兵さんたちは気にも留めないです。
<<やれやれ、男のヒステリーは、見苦しぃねー>>
<<黙れ!!>>
<<こちらイーグルアイ。余計な事をしている暇があったら敵を叩け>>
<<うるさい!たかが空中管制官風情が、私に命令するな!私は少佐だぞ!>>
今度こそ、温和そうな性格の管制官を怒らせてしまったようです。声の質が変わり、雰囲気も変わりましたです。
<<それは失礼した、少佐。そうだ、私の自己紹介がまだだったな。私は、ウスティオ空軍第6航空師団の、ジェームズ・グリアー中佐だ>>
今度こそ、あの人たちは黙りこくってしまったです。無線から、傭兵さんたちが笑いをこらえているのが聞こえます。
<<貴官の発言については、上官侮辱罪としてサピン軍司令部を通して抗議する。今までの会話についても、証拠として提出する>>
<<くっ!>>
機体を捻らせて、逃げるように離脱していくあの連中の姿。その姿を見た傭兵さんたちから笑いの渦が巻き起こりましたです。
<<ひゃっはっはっは!見たか!?連中のあの情けない姿!?くっくく、腹いてー…>>
<<グリアーの旦那もやるねー>>
<<各機、作戦の障害は排除した。残りの敵を攻撃せよ。時間がないぞ!>>
<<イャッハー!>>
勢いのいい声と共に、再びベルカ軍に襲い掛かる味方の機体を眺めながら、わたくしはまた心の汗が流れてきてしまいます。上手く操縦も出来ないのでそのまま直進していたのですが、グローブでしずくをふき取ったときにも、あのF/A-18Cはまだ隣にいました。わたくしは、さっきの女性に声を掛けましたです。
「ありがとうございましたです…あんなに、私の事を庇ってくれたのは、久しぶりで……」
<<気にするな。うちの連中は、おせっかいな奴が多いんだ>>
ガルム1のそばを飛んでいた、片羽が赤いF-15Cのパイロットの声が聞こえる。そのあと、さっきの女性の声が聞こえたときに、この人が私を庇った理由がようやくわかりましたです。
<<言いがかりを付けられるのは、嫌いだから…それに、私は本当に仲間を見捨てて逃げたから……>>
そう言って、北から近づいてくる敵機へと向かっていたガルム1―――F-15Cのパイロットが呼びかけていたのを聞くならば―――サイファーの後ろ姿を見ながら、わたくしは思ったんです。

この人と、わたくしは、同じ心の傷を持っている、と。


上空の敵機を攻撃していたマキシ、ハルバース・スキナーは、2機のMirage2000に追いかけられていた。一緒に飛んできたドラケン2機は落としたが、その後ろに隠れるようにして現れた2機の連携攻撃に、次第に退路を立たれつつあった。加速で一気に引き離そうとすると、長距離ミサイルに狙われ、急旋回でかわそうとすれば、その進路を妨害されるといった具合にだ。
(クソッ、せっかく新鋭機を使ってるんだ。ここで落ちるなんてごめんだ)
そこへ、敵機が追尾の形を変えてきた。敵機が、こちらが逃げ回るのに業を煮やしたのか、一箇所に集まってのガンアタックに切り替えたのだ。すかさず愛機のF-22を急降下させ、敵機を引き離しに掛かる。1機は後ろから追尾し、もう1機がスキナーの真上を取るようなポジションに移り、牽制する。だが、その時を待っていたスキナーは、一気に機体を上昇へと転じると、鮮やかな飛行機雲を引きながら上空のミラージュを撃墜する。正面から撃ち抜かれた敵機が、そのまま地面へと叩き落された。
生き残りを探すと、下から襲い掛かってくる敵機が見えた。すぐに機体を捻り、回避へと移る。が、敵機からの攻撃が来ない。代わりに、火を吹いた敵機が上空へ飛び出し、そのまま失速して落ちていった。代わりに、下から濃い蒼のホーネットが上昇してくる。
(あれは、さっきのガルム1かな…)
スキナーは、その相手を確かめながら声を掛ける。
「助かったぜ、ガルム1」
<<それはお互い様>>
やはり、さっきの女性だった。しかし、あのときの台詞は胸に沁みたね。空を飛ぶ仲間を守るために、ああいうたちの悪い奴らをギャフンといわせる、そういうのが出来るってのはあまりいないしな。さっきは少し悪乗りして、地面に落としてやるなんていってしまったが、よく考えてみれば、そんな事を言わなくても良かったな。
だが、お互い様?
<<さっき私たちが邪魔なのを追い払っている間、上空を守ってたのでしょう?>>
ばれてたか…。別に言う必要もないから黙っていようと思っていたのに。実は、さっき無線で話しかけたときも、敵機を追いかけている最中だった。
<<なかなかいい腕を持ってるんだな、マキシ。1機で敵を相手にしていたのか?>>
サイファーの隣にいる片羽の赤いイーグルからも声を掛けられた。あの機体は、確か…
「『片羽の妖精』か?アンタもいい腕してるんじゃないのか?」
『片羽の妖精』。名前の通り、片羽で任務を遂行した凄腕の傭兵。俺たち正規兵でも、その名は知られているほどの有名人だ。上空を警戒しながら、しばらくお互いの戦闘機動などで話が出来た。下を見ると、既にベルカ軍の攻撃もまばらになりつつある。どうやら作戦は成功しそうだ。やがて、無線で降伏が伝えられると、一気に無線が歓声に包まれた。
<<こちら作戦司令部、ゲルニコス作戦の成功を確認。連合軍艦隊は、進軍を開始せよ>>
<<こちら空母ケストレル艦長ウィーカーだ。航空部隊の面々、支援に感謝するぞ!>>
なんだか、高飛車な言い方する艦長だが、今は作戦の成功を祝いたい気分だ。スキナーも、少しばかり興奮の熱に当てられていた。
<<揚陸艦、シンベリン、タイタス・アンドロニカスは、海岸の陣地確保に向かえ>>
連合軍の艦隊から、揚陸艦2隻が海岸の港湾施設に向かう。その上空援護をして、今回は終わりだな。今日の出撃は、久々の快進撃だった。自分の戦いを振り返りつつ、機体を操る。
(そろそろ、北側のほうでも作戦が始まるはずだ…)
そう考えながら。

サイファーは、いまだに運河上空にいた。もう作戦は終了しているのにも関わらずだ。管制官からも、参加した部隊の撤収命令は出ていないが、もう運河上空にとどまる必要は無い。それでも上空にいる理由。それは、これからの作戦の為だ。次の作戦の準備の為に、一時的に待機の状態になっているゲルニコス作戦隊に待っていた通信が聞こえてくる。
<<こちらイーグルアイ、ゲルニコス作戦に参加した機体は一旦帰投せよ。周辺の基地で補給を受け、予備戦力として待機せよ>>
そう、AWACSからの帰投命令。これが発せられるのを待っていたのだ。
「こちらガルム1、燃料、弾薬共に余裕がある、このままコスナー作戦に参加、開始まで上空で待機します」
<<サイファー、どうしたんだ?何かあったのか?>>
ガルム2が珍しいことに驚いたのか、怪訝な口調で質問してきた。
「別に、ただ弾薬は全部撃ちつくしてから帰りたいから」
ガルム2の質問に答える言葉すら予定されていたもの。それに、さっきかなり目立つ事をしていたから、それなりの反応があるはず。
<<サイファーが残るってのに、俺様が帰る理由はない。メナス隊、このまま上空で待機だ>>
やはり、トラヴィスは残った。彼が、色々と絡んでくるから、残るだろうとは思っていたが。
<<なんだ、居残る奴がいるなら、俺も残るぜ。まだサイドワインダーが残ってるしな>>
やがて、他の人たちも参加を決め、最終的な作戦参加機体数は、27機になった。私は、その周りを飛びながら、自分の考えと、司令の考えが成功した事を、確認していた。元々、過剰なほどに南部と北部に戦力が集中していたのだ。余りが出てきてもおかしくない。今回は、それを利用しただけだ。
<<わたくしも、参加いたしますでございます>>
さすがに、ダルモエードのA-10が参加したのは予想外だったけど。
「あなたの機体で大丈夫?」
<<大丈夫でございますです。それに、さっき助けていただいた借りを返さなければ>>
そう言って、私の右後ろにポジションをとったA-10 。
<<相棒、たいした人気だな>>
ガルム2の言葉は、あまり気にしない。別に、私に人気があるわけではない。それに、彼女の事を庇ったのは、同情に近い感情があっただけ。今回も、弾薬に余裕が出る事を見越して、そういった人たちにきっかけを与えただけ。
ただ、それだけ………
<<司令部より、ラウンドハンマー作戦の発動を命ずる。なお、コスナー作戦は、準備が完了しだい直ちに発動。ベルカに反撃の暇を与えるな>>
艦隊の移動などに時間がかかったが、コスナー作戦の発動は、15分早まることになった。


砂漠に瞬く航行灯。翼に力を込めて、猟犬は飛び続ける。


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