[ディレクタス第3行政地区 5月13日 16時42分]
"Directus, Third Administration Sector" 1642hrs. 13 May 1995


街中で撃破された敵の車両が上げる黒煙が、翼をかすめる。その煙を抜けると、更に多くの煙が見渡せる。市内各所から立ち上がる黒煙は、その多くが市民たちの暴動によって燃やされてしまったベルカ軍の資材などだ。いまだにベルカ軍の抵抗が激しく、連合軍地上部隊が市街地での展開に手間取っている中、市民たちはろくな武器も持たずにベルカの正規兵に対して挑んでいき、そして徐々に追い込んでいっている。市民たちの力が、それ程までに膨れ上がってきていたのだ。
《住民が決起して暴動を起こしている!》
《早く退避しろ!危険だと言ってるだろう!》
<<見ろ。市民達が、ベルカに対して立ち上がったぞ!>>
<<俺たちも行くぞぉ!市民たちを守るんだ!>>
<<第2区の安全を確認!続いて、第3区へ向かいます>>
無線でも、味方の進撃が滞りなく進んでいる事を伝えていた。――このままいけば、あるいは…。皆がそう思った時だった。突然、町全体に鳴り響く荘厳な鐘の音。ディレクタスがベルカより独立した際に、当時の市長、クラウス・ケッセルシュラガーによって建造された、大鐘楼の鐘。ベルカによる統治後は、鳴らす事を禁止されたそれが、今鳴り響いている。
《何で鐘がなってるんだ中尉!?どこのバカが鳴らしてる!?》
<<懐かしい鐘の音だ。これを聞くために今まで飛んできたんだ>>
<<そうだ。この鐘の音を消させるな。ハンター隊、交戦!>>
町中に響き渡る自由の鐘。それはつまり、ディレクタスのベルカの支配からの解放を意味する。正確にはまだだが、時間の問題だろう。既に各地区でベルカ軍と連合軍との戦闘が始まっており、更に民間人の暴動が発生しては、ベルカ軍が戦線を保てなくなるのは必然だ。鐘の音が鳴り響くと、更に市民たちは勢いづき、どんどん過激な行動をとっているようにも見える。私は、自らの翔るホーネットを第3行政地区の上空で旋回させていた。夕焼けの色に染まり、戦いの空気に染まっているディレクタスは、悲しいほどの美しさを持っている。そして、その美しさに似合わない光景も。
《何で上からの指示が無いんだ!?少将殿はどこへ行った?》
《なんだ お前達!民間人は退避を、な、何をするんだ!?や、やめろ! 》
《ヘリの発着場で少将を!?》
《構わんから離脱しろ!この街はもはや落ちた!》
混戦した無線から聞こえてきた、敵の声。それは、戦うことを拒否し、逃げ出そうとする敵司令官の声だった。
《構わん!まずはディレクタスから離れるんだ!私が生きてさえいれば、それで良い!》
市庁舎のある建物の中庭から、飛び立つヘリが1機。輸送ヘリのCH-47だ。飛び立ったヘリは、そのまま街の外に向かって一直線に離脱していく。本来であるならば、司令部が陥落寸前になったときに司令中枢の人間の脱出用に使われるはずだったものだ。
<<ベルカのヘリが戦線を離脱している。奴らはもう逃げ出したのか?>>
<<ネガティブ。まだ市内では交戦が継続されている>>
そう、あのヘリはたった一人の男が部下たちを捨てて逃げる為だけに飛んでいる。ちょうど、あの時のように…。
<<訓練生たちは既に落ちたか…だが、私が助かったのだ。問題なかろう?>>
まただ。私の中からどす黒い何かが現れ、私の心を包み込んでいく。
でも、それもいい。今は…

空を切り裂き、翼が翔る。

今だけは…

その向かう先には……

ただ殺すことだけを考えよう…。
一気に加速し、ヘリの後方につく。レティクルに映った敵のヘリの必死の回避起動をあざ笑うように、私はずっとその姿を捉え続ける。
《だめです、後ろに付かれました!振り切れません!》
《対空砲火は何をしているんだ!?くそっ、連合軍の傭兵め!私を殺せるものならやってみろ!そうすれば、貴様も道連れだ!》
無線機からは、混戦したままのヘリの無線が聞こえ続けている。そして、まるで自分の命の軽さを知らなかったかのようなその台詞も、流れ続けている。
…ならば、望みどおりに、落としてあげる。
いい加減に、このつまらない男の声を聞いているのも飽きてきた。私は、ゆっくりと機銃のトリガーを引いた。地上からの援護も受けられず、ただ飛ぶことしか出来なかったヘリが機銃の一斉射で炎に包まれる。そして、そのまま地上の資材集積所へと落ちていき、炸裂した。
―――轟音。第4区に駐屯する部隊への弾薬供給を担っていたのか、随分と派手に吹き飛んだ集積所を飛び越え、私は次なる獲物を探す。地上は既に大混乱の渦だ。各地区で蜂起した市民によって、ベルカは既に戦闘を継続することすら出来なくなってきている。しかしながら、その中であっても空は別だ。
<<こちら第3戦車中隊!第4区北でベルカの攻撃機にしつこく狙い撃ちにされている!誰か奴を叩き落してくれ!>>
<<14号車被弾!生存者、不明!>>
<<クソッ、最初に対空車両がやられたのが痛かった…>>
私の飛ぶすぐ近くの地区を進行していた戦車中隊に対して、ベルカ軍機が攻撃を仕掛けていた。首を巡らせて見るが、近くにいる味方機ですぐにたどり着けるのは私だけのようだ。ガルム2は、先ほどから見かけていない。おそらく、ヘリを追いかけたときにはぐれてしまったのだろう。舌打ちしつつ、私は機首を戦車隊に向ける。
ディレクタスの夕焼け空に、蒼いホーネットが軌跡を描く。


[ディレクタス第4行政地区北 16時43分]
"Directus, Fourth Administration Sector"  1643hrs. 13 May 1995


二度目の反転攻撃に移った敵のA-10Aの機首から30mm機関砲が発射される。亜音速で飛来した弾丸が戦車の薄い上部装甲を貫き、厚い装甲で覆われている戦車を鉄の棺桶へと変えた。1台当たり、数名の乗員と共に。
<<3号車も被弾!>>
<<弾薬が誘爆したのか?あれじゃ誰も助からんぞ…>>
空高く舞い上がった砲塔が、地面に叩き落される。無残にも破壊された戦友の車両。この中隊に配属されたばかりの新任中尉などは、既に思考停止状態に陥っていた。隊長からの命令も、部下たちの指示を乞う声も彼を現実に戻すことは出来ない。士官学校で学んだ理論とか倫理といったものは、生と死の境目である戦場では何の役にも立たない。あるのは、死んでいった者と、これから死ぬ者だけだ。再び反転し、再度攻撃態勢に移った敵機の機首がこちらを向いた。その状態であっても、中尉はただそれを見つめることしかできない。連続した炸裂音。その時になって、ようやく中尉の目が閉じられ、体がかがめられる。だが、彼の体に衝撃が走ることは無かった。恐る恐る目を開いたところへ、炎を噴きながら墜落するサンダーボルトとそのすぐ上を通過する蒼いF/A-18Cが目に入った。A-10Aが墜落する音が、恐怖で固まっていた思考に答えを紡ぎださせる。
助かったっ!!
彼はほとんど意識せずに無線機の回線を上空の味方機に向かって開いていた。
「上空の味方機へ、支援に感謝する!」
<<死ぬのが辛いのは、傭兵も正規兵も変わりは無いわ…>>
聞こえてきたのは、透き通るような女性の声だった。しかも、傭兵と来たもんだ。中尉は我知らずに、無線機で声を掛け続ける。
「傭兵かい?恩に着るよ、これより進撃を再開する。前進っ!」
ようやく張りの戻った中尉の声に、部下たちもとりあえずは一安心する。空からの脅威をようやく排除された中隊が、第4区になだれ込む。街の通りに停車していた敵戦車から攻撃を受けるが、複合装甲ではじかれた砲弾はあさっての方向へと飛び去り、発砲した戦車に対して制圧射撃が加えられる。炎を上げて各坐した戦車を尻目に中隊は進撃を続け、第4区の敵兵は市民たちとの連携によって排除される。そして、近くの教会の鐘が、大鐘楼の鐘の音に負けじと鳴り響く。
<<第4行政地区のベルカ軍の排除完了!市民が自由の鐘を鳴らしている!>>
ディレクタスの街は、戦闘による爆発音に混じって鐘の音が聞こえる状態から、重なり合う鐘の音だけが聞こえる状態へと変わってきている。だが、それだけで終わることは無かった。


[ディレクタス第3行政地区 16時44分]
"Directus, Third Administration Sector" 1644hrs. 13 May 1995


市街地に追いやられた戦車部隊の上空を旋回しているのは黒い前進翼の機体。Su-47、ベールクト。開発国ですら、情報公開の行われていない謎の機体が何故こんなところを飛んでいるのか。その疑問を解き明かすには、今しばらく時間が必要だろう。機首とコックピット周りだけが未塗装で、銀色のジュラルミンが反射する夕焼けが、まばゆいばかりの光を持っている。謎の黒い機体に乗るパイロット、ブラッド・アンドリュースは、元はとある空軍のパイロット。それが今や、味方からも恐れられる傭兵。過去の事を多く語らない為、詳しいことは不明だが、彼が味方からも恐れられているのはその戦闘スタイルにある。元々性格が冷徹である上、空戦においてただの1機も見逃すことなく確実に死をもたらすことから『悪魔の牙』、デビルファングと呼ばれ、敵味方問わず恐れられている。今もまた、彼の牙にかかる獲物が一つ。急旋回で回避しようとしたMig-29Aの後方を維持するのは、ベールクトにとって造作も無いことだった。それゆえに、機体制御が難しいのが、難点ではあるが…。機銃の照準が狙う場所は、意思を決定する部位…。
僅かな機銃掃射で、コックピットを撃ち抜かれた敵機がしばらく水平飛行した後、郊外に向かって落ちていく。更に、北方に向かって離脱しようとするもう1機が見える。今度も、狙う場所は変わらず。
「死せよ…」
コックピットだけでなく、機首そのものを破壊された敵機は、錐もみ状態でばらばらになりつつ地面に向かっていく。再び市街地上空に戻ったアンドリュースは、蜂起した市民たちによって取り囲まれてしまったベルカの戦車部隊をつぶさに観察していた。キューポラのハッチから引きずり出された戦車兵が、民衆の渦の中に消えていく。おそらくは、その渦の中で暴行を受けているのだろう。だが、彼らに罪の意識はほとんど無い。民衆の熱気が、そういった暴虐な行為さえも正当化してしまう。
「愚かだ…」
アンドリュースは見ていられないとばかりに機体を捻らせ、その場から遠ざかろうとした。だが、その時民衆のいた場所で突然爆発が起こった。その時に、爆風で吹き飛ばされる色とりどりの物体。それは、さっきまで自分の足で立っていた人々のなれの果てだった。アンドリュースはその赤い瞳を見開き、一体何が起きたのかを確認した。民衆の傍に鎮座する戦車は、すでに活動を停止している。逆に、いまだ抵抗の激しいウスティオ方面軍司令部のある市庁舎付近では、戦車が活発に活動している。おそらく、ここから発射された砲弾が炸裂したのだろう。すぐさま機体を通りの戦車に向ける。兵装選択、ガンモード。レティクルの中央に、円形の砲塔を持った特長的な車体が収まる。
「散れっ!」
ほんの一秒に満たない機銃掃射。それだけで、戦車の装甲に孔があき、爆裂する。爆炎を上げる戦車の上空を通過し、機を水平に戻す。
<<こちらC中隊!第3区で、ベルカの戦車が市民に向かって発砲している!>>
<<クソッ、ファシストめ!!市民を虐殺するつもりか!?>>
<<各部隊、市民を守れ!建物を壊しても構わん!>>
周辺地区を飛行していた航空機、第3区の担当の地上部隊が一斉に市民を攻撃しているベルカ軍部隊に襲い掛かる。市民を銃撃していた歩兵が連合国の兵士に頭部を撃ち抜かれる。更に地面に横たわった遺体にも容赦ない攻撃が加えられ、原形を留めないほどに破壊される。市民の列に対し発砲した戦車のすぐ近くまで近づいた空挺部隊の中尉が、TNTの入った袋を戦車の下に投げ込み、爆発させる。だが、1度始まった狂気を止めるにはまだ時間がかかる。戦車が、兵士が、武器を持たないものたちが、殺しあう。今は第3区のみの現象だが、いまだ連合軍の到着していない地区で同じことが起きれば、更に多くの一般人が死傷することになるだろう。その前に、指揮を取っている中枢を破壊しなければ…。そう思ったときに、すぐ下のビル街に逃げ込んだ戦車部隊が進撃しているのが見えた。向かう先は、グレースケレ川脇の公園。市民たちが蜂起した場所でもあり、戦闘に参加しない人たちが集っている場所でもある。そんなところが攻撃されれば、大惨事だ。
「第3区の味方部隊へ、敵の戦車部隊を撃破しろ。奴らは公園を狙ってる」
だが、アンドリュースの警告は無意味だった。
<<無理だ。ビルが邪魔して攻撃が出来ない!他の位置から再度攻撃を仕掛ける>>
<<クソッ、このままだともっと多くの市民が傷つくぞ!>>
ディレクタスの行政中枢である中心街には、背の高いビルが多く建造されており、進撃する戦車部隊はその合間を縫うように進撃を続けている。このままでは、奴らの到着を許すことになる。
何とかしなければ…
だが、無情にも時間だけが過ぎるのみ。


たった数秒前まで、僕のすぐ傍で生きていた人たち。熱気によって支配され、暴行を振るっていたその人たちは、今や物言わぬ遺体となって地面に横たわっている。そして、僕の目の前には動かないフェルディナントさんの上で嗚咽しているハンナの姿がある。市民たちから解放されたヴィクトールも、そのあまりにも哀しい背中に声を掛けることが出来ないようだ。そのことに対して何も出来ない、自分が悔しかった。僕は、上空を飛びすぎる前進翼の機体に目を細めた。その時、66号車の無線がノイズの後に声を発した。
《撃てっ!撃ち殺せっ!ベルカの敵は、粛清されねばならんだ》
それは、さっきまで負けたものだと思っていた人物の声だった。
《しかし大尉、民間人を攻撃する事が、本当にベルカのためになるのですか?》
《口答えするな!奴らは、クズだ!民間人だろうが何だろうが、クズはクズだ!》
「アイヒマンっ……!!」
それは、ルディガー・アイヒマン、その人の声だった。あいつの声が無線から聞こえるということは……奴が、この悲劇の引き金だったのか。僕の中からどす黒い憎悪が沸き起こる。
「ヴィクトール!!」
僕は傍にいるヴィクトールに声をかけると、66号車に向かって駆け出した。フェンダーに脚を掛けて戦車上部へ登り、すぐに砲塔のハッチから中に滑り込む。すぐさま無線のインカムを付け、車両の状態を確認する。弾薬、燃料共に問題なし。照準器、主砲も正常。エンジンのスターターのスウィッチを入れる。僅かな咳き込みで、排気口から煙を噴出したエンジンに火が点る。無線からは、いまだに奴の声が響いている。
《そうだ!もっと撃て!この街の支配者が誰であるのか、教えてやれ!》
《クソッ!もはや自分の命だって守りきれないぞ!》
僕は無線のスウィッチに手を掛ける。
「戦闘中の全部隊へ。民間人を攻撃するとは何事だ!?貴様ら、それでもベルカ軍人か!?」
《うるさい!今撃たなければ、俺たちが逆にやられるんだ!》
《攻撃をつづけろ!でなければ、奴らに殺されるぞ!》
僕の制止も意味は無く、僕たちのいる場所から川に向かって機銃掃射しながら進む小隊規模の戦車が通過する。舌打ちし、ハッチを閉じようとしたときに、細い腕に手を掴まれた。見上げると、ハンナがこっちを見ていた。
「…私も連れてって…」
「ハンナ……」
目を、赤く晴らしたまま離す彼女の目には、何かがあった。
「あいつらを、お父さんを、殺した奴らを倒すんでしょう?」
それは、悲しみを埋めるほどの、憎しみ。僕は、悲しみを感じずにはいられなかったが、何も言わずにハンナを戦車の中に入れる。操縦手の姿が見えないため、操縦席にはヴィクトールが座る。そして、僕が砲手へ。戦車長の席にハンナを。66号車が街道の真ん中へと躍り出ると、そこから川脇の公園に向かう3両の戦車の真後ろに出る。
「ハンナ…」
ハンナはただペリスコープから土煙を上げて進む戦車を見るだけ。それでも僕は、かまわずに話し続ける。
「フェルディナントさんは残念だった。それに、君があいつらを憎む理由もよく分かる」
だけど、照準を合わせることはきちんとする。装填する弾種は、APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)。
「だけど、本当に憎むべきなのは、あいつらじゃない」
この言葉に、ハンナがこちらを向く。僕は、ゆっくりとつむぎだすように喋り続ける。
「あいつらが、フェルディナントさんを殺したのは確かだ。でも、あいつらだって好きで人を殺しているわけじゃない、戦争なんだ」
「でも、あいつらがお父さんを…」
「よく聞くんだ!」
ハンナの肩を掴んで体をゆするようにこちらを見させる。正面から彼女の青い瞳を見つめながら、言葉を続ける。
「あいつらだって、人間だ。傷つけば痛いと感じるし、悲しみに涙を流すことだってある。そんな人たちが、何で反抗したからといって民間人を攻撃するような事をしたのか…?」
ハンナは、黙ってこちらを見つめるだけ。ヴィクトールも、何も言わずにただ前方の戦車から離されない様にするだけ。
「それは、市民たちを恐れたから。怖かったからだよ。みんなの熱気が、怒りが、彼らに恐怖を与えたんだ。恐怖が、人の正常な判断を奪ったんだ」
ハンナの肩を離すと、照準器を覗き込む。照準の中央に、前方の戦車の背部が重なるように、位置を調整する。
「だから、それを正常な状態に戻さなければならないんだ」
ハンナも、ヴィクトールも、ただ静かに聞いているだけだった。
「これが正しいことかどうかは分からない。でも、今やらなければ、きっと後悔する。それだけは、嫌だ」
照準器の△ターゲットに、スタッグの駆動輪が重なる。
「だから、僕は戦うんだ!!」
そして、僕は引き金を引いた。
 

みんながそれを止めようとしていた


<<第3区に戦車を回せ!市民を守るんだ!!>>


だが、その苦労を裏切るかのように、人の狂気が牙を向く


《もっと撃てっ!皆殺しだ!ディレクタスを破壊しろ!》


それを止める側もまた、悲劇であり、多くの悲しみを生む

<<くそっ!くそっ!くそっ!ベルカのバカヤロウ!!!>>


通りで、家で、裏路地で、多くの人たちが殺し合い、傷つけあう


《もうベルカは僕の祖国ですらない!今守るべきは、傷つく必要のない人たちだ!!》


だが、諦めるものは一人としていなかった


<<第5区は確保した。すぐに第3区に向かう!それまで持ちこたえてくれ!>>


逃げる者もいなければ、戦いを止める者もいなかった


<<俺たちの町をぶち壊しやがって!ただで済むと思うなよ!>>


そこに、End of the Worldはなかった


《もはや貴様たちは友軍ですらない。私はベルカの軍人として貴様らを止める!》


あるのは、最後まで諦めない人間の生きる姿だった

 


突然起きた人間の狂気に対しても、的確に対応できるものは少ない。もし出来る人間がいるとしたら、その人間自体が狂っていると考えるほうが妥当だ。そう、今の私のように……
高度5000ftsから垂直降下し、市民を銃撃している装甲車の真上から残しておいたアムラームと機銃を同時に叩き込む。すぐに引き上げ上空へと戻るが、対空ミサイルと言えその運動エネルギーだけでもかなりのものになる。真上からのエネルギーは装甲車の装甲を貫通し、内部を引き裂きながら底部の弾薬庫に到達。誘爆した弾薬による爆風が、機銃掃射を生き延びた歩兵を飲み込む。私は、ようやく合流したガルム2と編隊を組む。今や、連合軍の部隊の実に6割近くがこの第3行政地区に集まりだしている。中には、市民への攻撃を拒否し、連合軍に投降、もしくは元友軍に対して攻撃を仕掛けたベルカ軍部隊もいた。それに対するベルカ正規軍は、その流れの中に消えるはずだった。既に、司令部は機能消失し、指揮系統すら崩壊しているはずだった。だが、彼らは銃を撃つ事を止めなかった。たとえ隣の同僚が撃たれても、すぐ傍で爆発が起きても、引き金を引き続けた。全ての兵士たちが、なぜこんなにも狂気に身を狂わせているのか?
《殺せっ!殺すんだ!》
<<ベルカは何時になったら戦いを止めるんだ!?>>
<<市民たちを避難させろ!ここはまだ危険…>>
《弾が切れた者は、自決しろ!》
<<少尉殿!!くそっ、衛生兵!衛星兵、来てくれ!>>
《そうまでして、他人を傷つけることが、お前の目的なのか!?アイヒマン!》
地上にいる元ベルカ軍の戦車から発射された砲弾が、いまだに攻撃を続ける戦車隊に炸裂する。直撃を被った戦車が、黒煙を噴出して各坐する。
《ヴァルトマン中尉!貴様、祖国を裏切ったのか!?》
《最初に裏切ったのは貴様だ、アイヒマン!祖国の名誉を、ベルカ騎士団の末裔といわれるベルカ軍の顔に泥を塗ったのはな!》
どうやら、元は同じ部隊にいた人間同士らしい。無線機で罵声の応酬を始めているが、時々地方の訛りが混じって、私のベルカ語では翻訳しきれない。
<<こんな事をするのが、ベルカという国だったのか…?>>
まるで、この光景を信じきれないというようにラリー・フォルクが呟いた。彼の機体を左後ろに見つつ、声を出す。
「違うわ。これは、人間という種その物が持っている負の感情が、表面化しているのよ」
<<何だって?>>
下では、先程の元ベルカ軍戦車が攻撃を続けている。
「人間が持つ、恐怖、憎しみ、欲望。それらは、時として集団的な行動にも影響を及ぼすこともある」
市民に取り囲まれたベルカの兵士たちが、群衆の波に消えていく。燃え盛る車両から逃げ出そうとした兵士に対しても、容赦ない攻撃が加えられる。
「今回は……悲劇が重なっただけ…」
(…私の中にも、これがある……)
私たちは、ディレクタスの上空にあって場違いな静寂に包まれていた。それも長くは続かず、目の前を炎をが吹き降ろしたような錯覚に襲われた。すぐに操縦桿を引いて警戒して見るが、周りには何も見えない。そのかわり、地上に向かって降下するフレアーパターンのSu-37が見えた。
上空から地表近くまで降下して機銃掃射するのは危険すぎるし、俺の気分にも合わない。ここは、やっぱりど派手にロックと行こう。兵装システムから分離した、特殊兵装システムを起動する。これは自分自身が組み込んだものだ。問題があるわけもなく、システムは快調に起動し、エネルギーゲージが徐々に溜まり始める。しかし、すぐに使えるわけではないので、しばらくは上空で待機してなければならない。その間、周りで慌てふためいている連合軍部隊や、殺戮を続けているベルカ軍を、メタルを流しながら眺めていた。その時、1機のF-22が地上を攻撃するのが見えた。機銃掃射で爆裂する破壊のエネルギーが、車両をくず鉄に変える。ちょうどこちらのすぐ真横で翼を回したのでよく見えたのだが、エンブレムは双頭の鷲。国籍マークはベルカの逆三角形だ。
「ヒュゥゥゥーーッ」
ベルカにもまともに考える奴がいたことに、口笛を吹いて賞賛する。そうしているうちに、エネルギーが充填完了した事を知らせるランプが点った。にやりと笑って機体を一気に降下へと転じさせる。HUDに表示された機体軸に沿った照準。その死のマークに、的の戦車が重なる。
「ど派手に行こうかぁ!」
操縦桿に追加したカバー付きトリガーを引き、機種に搭載した電磁の兵器を解き放つ。2本のレールの間に流れる電流と弾体の後方にあるプラズマに流れたメガワットクラスの電流が弾体を毎秒数キロという速さにまで加速し、僅か23mmの弾体を何人もそれを止めることの出来ない状態へと昇華する。同時に、機体の電磁波防護のためにテイルコーンから電磁衝撃波が放出される。発射された弾体が、あっという間に戦車の装甲を貫き、貫通して地面に突き刺さる。直後にエネルギーを熱に換え爆発。地面に放出されたエネルギーが石畳の道を瓦解させる。曲のシャウトに合わせて叫んだロック・ジーン・セレスティア。サピン王国空軍非公式戦闘飛行隊フィアス隊に所属するこの人物がここにいるのは、彼自身の目的の為であり、この戦争への参加した目的でもある試作兵器のレールガンのテストだった。今、その目的を一時的に満たされ、彼はまた空での様子見へと移った。元々、この戦闘に対してサピンは中立の立場を取っている。ここにいるのは、彼が上官や指揮系統と言ったものに対して気にするような人間ではないからだ。そのかわり、ウスティオ側は感知しないし、死亡しても遺体等の回収は行われることは無い。そんな状態であっても、彼は上機嫌だった。下の惨劇とは無縁な、メタルを大音響で流しながら……。

突然鳴り響いたメタルの音楽と共に、写真館の隣の戦車が粉々に吹き飛び、その衝撃で周りの石畳まで崩れてしまった。既に市内に残っている残存部隊のほとんどが連合軍に制圧されつつある。今も抵抗を続けていられるのは、アイヒマンのいるらしい武装親衛隊の本部付近だけだ。おそらく、大尉という階級と奴自身が持っているコネクションを使って指揮権を掌握したのだろう。いまだに発砲を続けるレオパルト2A6戦車の戦闘力を奪ってから、ヴィクトールに前進を命じた。すぐさま通りに出た66号車の正面に、親衛隊の本部が見える。僕は隣のハンナに気を掛けていた。
「大丈夫かい、ハンナ?」
「平気…」
さっきからずっとこの会話を繰り返している。初めて戦車のような乗り心地が最悪の車両に乗ったのだ。鍛えられた人間でも、酔ってしまいかねないのに。まして、今は戦闘中だ。硝煙の煙だって彼女には辛いはずだ。いちよう、ヘッドセットとゴーグルは渡してあるが、あまり無理を掛けたくない。しかし、今彼女を下ろしているような余裕もない。苦汁を飲む選択だが、このまま最後の戦闘を終わらせて、僕たちと共に連合軍に投降するしかない。そう思っているときに、ヴィクトールの警告の声で意識を正面に戻される。それと同時に今までに喰らったことの無い衝撃が66号車を襲った。内壁に顔を叩きつけられ、額を切ってしまったが、すぐに照準器を覗く。見ると、正面の建物の脇からレオパルト戦車の長い砲身が付き出している。すぐさま、照準して砲撃を加えるが、障壁装甲で軽減されたAPFSDSでは奴の装甲を撃ちぬくのは出来なかった。すぐに次弾を装填するが、先に発砲した向こうのほうが第2射目を撃った。飛来した砲弾が爆発反応装甲を貫き、再び凄まじい衝撃が僕たちを襲う。ハンナの悲鳴が聞こえるが、僕は照準器から目を離さなかった。装填が完了すると、僕はすぐに発射した。狙ったのは、先程の着弾でゆがんだ隔壁装甲の部分。狙い通りに、ゆがんだ装甲は本来の役割を果たせずに内部の複合装甲へと直接の弾着を許した。ヒョウの名を持つ戦車が黒煙を噴いて停車する。それを確認するとすぐに車内の状態を確認する。
「みんな無事か?」
「…なんとかね」
貫通した弾頭の一部が内装を引き裂いている。幸い、ヴィクトールのほうは怪我がないようだが…。そこで僕は、おそらく人生の中で最悪の後悔をすることになった。戦車長の座席から転げ落ちたハンナは、頭から血を流しながらぴくりとも動かなかったのだ。
「ハンナっ!」
すぐに彼女を抱きかかえるが、彼女は目を閉じたままだった。
「ハンナ、ハンナ!答えてくれ!!ハンナぁ!」
僕は無我夢中で彼女を抱きかかえた。だが、無常にも彼女の目が開かれることは無い。
「うわあぁぁあぁぁ!!!」


慟哭―――
それは、最後まで守りたかった、灯火を失った男の叫びだった。
『でも、あなたがホルスト・ヴァルトマンであることは変わらないんでしょ?』
彼女が言ってくれた言葉―――とても嬉しくもあり、辛かった。自分は、もう変わっていると気づいていたから。
『私にとって、ホルストは一人だけなのよ…お願いだから…』
彼女の涙を―――止めてあげたいと思っていた。そのために、自分の身を捨てる覚悟だってあった。
そして、彼女とのファーストキス。それが、最後のものにするつもりなんて無かった。
『必ず君の元へ戻るよ。そしたら、今の続きをしよう』
必ず、昔のように戻っ……戻ろうと約束したのに…。


「ホルスト…」
66号車の中にヴィクトールの声とホルストの泣き声だけが響く。だが、徐々に近づく音が聞こえだしていた。
《…げ!この街……脱出………》
《…うこの街…は用は無いな。まあ、今まで楽しませてもらったお礼ぐらいはしてやろう》
《そのために砲弾を残しておいたんだろ?はーっ、はっはっはっはっは!!!》
親衛隊の連中の無線だ。元々、奴らが秘密警察と連携して治安維持という名目上の行動をしていたのだ。そして、その行為が市民たちの憎しみを煽り、今回の悲劇の遠因になったのだ。そんな奴らが、のうのうと生き残って、今離脱しようとしている。しかも、本来分配されるはずの武器を自分たちの分だけ掠め取り、他の部隊に僅かだけ渡していただけだったのか。自然、怒りがこみ上げる。車軸のほうはどうやらやられてしまったようだが、ヴィクトールがまだ生きている砲塔を旋回させて逃げ出そうとしているルクレールの車両を狙おうとした時だった。
「…ヴィクトール…」
突然、ホルストが声を出したのだ。だがそれは、覇気や勢いの全く無い、しかし決意だけは秘められた声だった。
「君は脱出してくれ…後は俺と彼女で片をつける」
「中尉…」
その声を聞いたときにすぐに分かった。もう、彼は死に逝く事を受け入れている。そして、自分がそれに対して出来ることは、何も無いということも。後ろ髪を惹かれる思いをしながら、車体下の脱出ハッチを開く。
「ありがとう、ヴィクトール。君のような戦車乗りに出会えて、俺は幸運だったよ」
出る前に、ホルストから声を掛けられた。いまだに、ハンナという女性を抱きかかえたままだ。ヴィクトールはその姿のままのホルストに対して、狭い車内で敬礼をする。
「いえ、自分の事を本気で仲間と思ってくれた上官は、あなたが初めてでした。あなたこそ、最高の戦車乗りです」
ホルストも、ゆっくりと敬礼を返した。姿勢を戻すと、すぐにハッチから車体と地面の隙間に入り込む。すると、ちょうど66号車のすぐ真正面を通過する車両が数両見えた。後方から抜け出し、近くの建物の影に隠れたが、後ろから複数の人間に押さえつけられてしまった。抵抗しようとしたが、結局地面に押さえつけられてしまう。その時になって、自分がレジスタンスの真っ只中にいることに気づいた。ごく普通の市民の出で立ちの人たちだが、その目にはやはり狂気の色が垣間見える。
(もうだめか…)
そう思ったときだった。一人の男が人々を掻き分けて出てきた。その男がヴィクトールを押さえつけていた数人に合図をすると、ヴィクトールは解放された。しかし、ヴィクトールはその男を睨みつける。
「どうした?憎いベルカ人をなぶり殺しにするんじゃないのか?」
睨みつけるヴィクトールに対して、男は静かに被りを振った。
「私は、あなたが我々を守るために戦ったのを知っている。だから、あなたを殺さない」
周りの人間にも、少しだけ冷静な空気が流れる。しかし、それでも1度燃え盛った炎を消すには少なすぎる。
「どんな奴だろうが、ベルかはベルカだ!」
「そうだ!」
「俺たちの町から、追い出せ!」
「止めるんだ!」
男の制止も聞かずに、幾人かの男たちにヴィクトールは通りのほうへと追いやられてしまった。
(ホルスト、これが俺たちが守ろうとした人間の本性だというのか!?お前は、この光景を見て、まだ戦えるのか!?)
通りのほうに顔を出してみると、各坐したままの66号車の砲身が動いているのが見えた。

「もう少しだよ、ハンナ。もう少しで、あいつらに手が届く」
砲身を旋回させながら、ホルストは先ほどからハンナに向かって語りかけていた。だが、今聞こえるのはホルストの声だけだ。しかし、それでもホルストは喋る事を止めない。
「君が言うとおりだったのかもしれないね。あいつらに関して言えば、容赦なんて必要なかった」
照準は、離脱しようとするルクレールの真ん中につけてある。
「あいつらは、他人がどうなろうと気にも留めたりしなかった。あいつらは、ただ殺戮を楽しんでいただけだったんだ」
引き金を引き、125mm滑空砲から砲弾が放たれる。放たれた砲弾は、正確に戦車の中央部を貫通し、エンジン内部を引き裂き搭載燃料に引火、紅蓮の炎が車内を焼き尽くした。攻撃を受けた彼らは、慌てふためいて急停車してしまった。その好きに、2発目を打ち込む。しかし、これは複合装甲にはじかれてしまう。
「だから、僕で終わりにするよ。もう、こんな悲しみの連鎖はこりごりだ」
自動装填装置が次の砲弾を装填するまでに、次の標的に狙いを定める。無線でも、あいつらの混乱が分かる。
《何でこんな時にやられなければならないんだ!?このままじゃ、街を出られないぞ!》
《おのれ、ホルスト!またしても私に邪魔立てするつもりか!?》
装填完了と共に発砲し、右側の戦車を仕留める。しかし、撃破した戦車の後ろ側にいたレオパルトにはまだ攻撃が出来ない。あれに、アイヒマンが乗っているはずだ。あいつを仕留めなければ、今回の悲劇を完全に終わらせた事にはならない。そこへ、撃破した戦車の傍から逃げ出すアイヒマンの戦車が映った。
《もうあんな奴に付き合う必要は無い。すぐに街を離脱しろ!》
微笑みながら、照準で奴の戦車を狙い続ける。
「もうすぐ終わりだよ、ハンナ…」
引き金を引き、炸薬に点火すると膨大な熱エネルギーと運動エネルギーとして砲身内部の125mm砲弾を前進させる。方向に達した砲弾が後方からのエネルギーに押されて飛び出すと、装弾体と弾体本隊に分離し、弾体が100mも離れていないレオパルト戦車の側面装甲に突き刺さる。1200m/sで到達した弾体は、もやは貫くという運動をせずに装甲ごと流体として運動し、内部に強大なエネルギーとして到達する。内部にまで到達した弾体は、戦車長席に座っていたアイヒマンの体を粉々に引き裂き、搭載弾薬を誘爆させてレオパルトを内側から破壊していった。砲塔が空高く舞い、通りに叩き落される。その光景を見ても、ホルストの心は冷静だった。
「これで、やっと、君の元へ…」
気づいていたのだ、彼は。今、自分たちを狙っている別の戦車がアイヒマンの戦車の後ろにいたのを。それに気づいた時点で、彼はハンナの体を抱きかかえると、66号車の床に彼女を庇うようにうつ伏せになった。
「続きをしようか…」
いまだに、閉じられているハンナの目に向かって語りかけた後、彼は顔を下ろしていく。その直後、66号車を強烈な衝撃が襲う。

撃破した戦車の後ろにいたもう一台によって、66号車が被弾する。今度は、リアクティブアーマーも役に立たず、貫通した。被弾の振動に身を震わせると、66号車は、完全に沈黙した。中にいる、ホルストと共に…。
「ホルストォー!」
ヴィクトールの叫びがディレクタスの町に響き渡る。先ほどの男がヴィクトールを押し倒したすぐ傍を、機銃掃射が襲う。先ほど66号車をしとめた戦車からの攻撃だ。
「逃げるんだ!」
すぐにヴィクトールを立たせて逃げようとしたが、それは無意味に終わった。敵が突然逃げ出したかと思うと、上空の蒼い機体からの攻撃で撃破されてしまったのだ。すぐに上空に戻った機体が、上空を旋回する連合軍機の群れに合流して行った。

[ディレクタス第3行政地区 16時57分]
"Directus, Third Administration Sector" 1657hrs. 13 May 1995


<<こちらイーグルアイ。全区においてベルカ軍の殲滅を確認>>
《街の部隊は壊滅した。生き残っているものは、後方の友軍に合流せよ》
《俺たちベルカは、負けんたんだな…》
<<やったぞ!俺たちの町を取り戻した!>>
無線機から、市民たちの熱気に満ちた声が聞こえてくる。その熱気が、ベルカを追い出す原料となり、そして、悲劇の元になった。
<<彼らには戦う理由があった。だから、勝敗は決していたはずだ…>>
フォルクの声も心なしか落ち込んでいる。しかし、これでウスティオが解放されたと歓喜に満ちた声が聞こえるのも事実だ。私たちは、ディレクタスの大鐘楼の上空を通過する。ベルカ軍から取り戻した鐘を、鳴らせる限りならしている市民たち。しかし、その市民たちに立ち向かうしかなかったベルカの人間は、どんな気分だったのだろうか…?そして、殺戮を行う事をいとわなかった、人間の気持ちは…?
突然鳴り響いた警告音。AWACSからだ。
<<警告!警告!北西から飛来する未確認機を確認!>>
<<まさか、いまさら増援か?>>
フォルクがぼやいているが、私はすぐに北西へと進路をとる。AWACSからのデータでは、街の北西から高速で飛来する敵性反応2つがレーダーに映し出されている。


GELB
Belkan Air Force 5th Air Division 23rd Tactical Fighter SQ


《どうやら、街は連合軍の手に落ちたようです》
《まだ終わっているわけではない。命令は命令だ》
《…わかりました》
Su-37を操る番のカワウ。オルベルト・イエーガー少佐と、ライナー・アルトマン中尉の二人で構成されるゲルブ隊は、古くからペアの組まれている二人のパイロット達の手によって兵站が充分な状態であるにもかかわらず着実にスコアを伸ばしてきた。ベルカ南部防衛線『ハードリアン線』による迎撃任務を終えた彼らが向かった先は、既に戦闘の終了しかけていたディレクタスだった。それも、友軍の敗走によって…

<<早いぞ、2機の機影がマッハ2で接近中!>>
「ここは、俺たちで相手するしかない」
他の部隊は、ベルカ軍の暴走を止める為に疲労しているはずだ。今、正面のかなり出来そうな奴らとまともにやり合えるのは俺たちぐらいなはずだ。それに、さっきの光景を少しでも忘れていたかった…。

ディレクタス上空で、2機と2機が激突する。


Mission6-3へ

Indexへ
inserted by FC2 system